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最高裁判所第一小法廷 昭和52年(オ)649号 判決 1977年10月27日

主文

本件上告及び附帯上告を棄却する。

上告費用は上告人の、附帯上告費用は附帯上告人の各負担とする。

理由

上告代理人堤敏恭の上告理由第一点について

保全処分の執行が被保全権利を欠くために違法とされた場合には、その保全処分の申請人に過失が認められる限り、申請人は当該保全処分の執行によつて損害を被つた相手方に対しその賠償責任を負うものというべきである。原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人は、被上告人の本件土地使用権が法定地上権であつて、引き続き二年以上地代の不払があるときでなければ地代支払の不履行を理由にその消滅請求ができないこと(民法二六六条一項、二七六条)を知り又は知りうべき事情にあり、しかも、右地上権消滅の要件がいまだ具備しないのにかかわらず、被上告人に対して賃料不払を理由とする本件土地の賃貸借契約解除の意思表示をなし、その有効であることを前提として本件仮処分の申請に及んだというものであつて、本件仮処分の申請が被保全権利を欠く違法なものであり、かつ、上告人に過失があつたというべきであるから、上告人は本件仮処分の執行によつて被上告人の被つた損害につきその賠償責任があるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同第二点について

所論の合意に本件仮処分の執行によつて被上告人の被つた損害の賠償請求権の放棄あるいは免除の約定までも含むものではないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

附帯上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤崎萬里 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光 裁判官 本山 亨)

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